[産業]奈良県毛皮革連合会理事長「冬場は毛皮を売る大事なシーズンです」

奈良県毛皮革協同組合連合会 西浦賢一理事長
奈良県毛皮革協同組合連合会 西浦賢一理事長

菟田野の毛皮革産業について、奈良県毛皮革協同組合連合会 西浦賢一理事長にインタビューした。

記者
菟田野の毛皮革産業の歴史について教えてください。

理事長
「明治時代の1883年、藤岡勇吉本店が菟田野で鹿革加工をはじめたのが、菟田野毛皮革産業のはじまりだと言われています。
私が子どものころ、50年くらい前(1970年ころ)は、うさぎの皮革加工がさかんでした。コート・手袋・耳あて・帽子などに使われました。
その後、鹿の原皮が大量に輸入されるようになりました。原皮を洗浄し、なめす仕事がさかんになりました。
1970年代から1990年ころまで、高級志向で、ミンクなどの高級毛皮が売れました。
菟田野岩崎は活気がありました」

中国から輸入された鹿皮
中国から輸入された鹿皮(奈良産業株式会社・菟田野古市場)

記者
活気がなくなってきたのはいつからですか。

理事長
「バブル経済が崩壊した1990年前後から、高級毛皮の販売が減っていきました。
それ以前に、過去から、いるか・くじら・象牙などの世界的な動物愛護運動が起きるたびに、毛皮が悪く見られてきました。最近は、高級ブランドバックが毛皮を使わなくなってきています。
毛皮に使われる皮革は、養殖ものです。
牛革のサイフ・ベルト、私たちが牛肉・豚肉を食べているのと同じですよと言いたいところですが、理解を得られないのが私たちのしんどいところです」

記者
菟田野で、毛皮革関係の会社は減っていますか。

理事長
「むかしは、毛皮革関係の会社は100件くらいありました。従業員も多かったです。最盛期は、1,000人くらいいたと思います。
現在は、会社も減りましたし、従業員も減りました。150〜200人くらいです。個人や家族だけでやっている小さな会社が多いです。後継者のいない会社もあります」

記者
将来の不安はありますか。

理事長
「だめなら廃業したらいいだけのことで、息子に継がせることも考えていないですし、せっぱつまった不安はないですが、売れなくなっているなぁという、ばくぜんとした不安はあります」

記者
宇陀で捕獲された鹿の皮は、革に加工できそうですか。宇陀市は、室生にシカ・イノシシの解体施設を建設するそうです。

理事長
皮の品質や、採算のことも考えなければならないですが、技術的には可能でしょう。北海道から、鹿皮が入ってきています」

N K. FAR(菟田野古市場)
N K. FAR(菟田野古市場)

記者
もし、政治家に伝えたいことがあれば。

理事長
「毛皮を買ってほしいですね。大変ですね、いい商品ですね、と言ってくれますが、毛皮を着てほしいですね」
「毛皮は、一年中売れるものではありません。寒い時期に売れます。冬場は、毛皮屋にとっては大事なシーズンです。毛皮に関しては、季節を考慮した産業振興策が求められます」

(社会部 竹田克司)

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