1億円の「宇陀市移動診療車」、もっともっと改善をしていくべき

「宇陀市移動診療車(UMC)」

2022年5月11日、「移動診療車」による診療が、宇陀市大宇陀ではじまりました。

金剛市長(2021年6月2日)
「地域医療の充実を図りたい。大宇陀地域は、医院が1つしかありません。今後さらに、医院の減少が予測されます。診療所をつくるか・市立病院への交通をサポートするか代替策も考えたうえで、移動診療車を導入することにしました。移動診療車は、移動する病院であり、画期的です」
「安心して住める地域にしていきたい。移動診療車でPCR検査も可能です。災害が起きたときに、出動することが可能です。ほかの自治体に派遣することもできるでしょう」

「宇陀市移動診療車(UMC)」には、エックス線撮影器(レントゲン)・心電図・エコー装置・生体モニター・検体検査機器・AED がのせられており、「走る病院」です。
自治体が、このような大きな移動診療車を購入することは、全国的に類がないと言われています。

「宇陀市移動診療車(UMC)」を購入する予算は、車両代4,531万円・医療機器代5,100万円など、9,650万円でした。およそ1億円でした。
財源は、合併特例債(約3割が宇陀市民の借金となる)でした。
維持費として、毎年 2,700万円かかると言われていました。

「宇陀市移動診療車(UMC)」のような車両は、全国的に見ると、消防署などにあるようです。

東京消防庁「スーパーアンビュランス」

少なくとも、東京消防庁、京都市消防局、静岡市消防局、岐阜県可茂消防事務組合、日本赤十字社熊本県支部に、「スーパーアンビュランス(訳すと、特別な救急車)」があります。
東京消防庁の「スーパーアンビュランス」は、左右が広がって、最大40㎡の広さになります。

東京消防庁「スーパーアンビュランス」

「スーパーアンビュランス」は、東京地下鉄サリン事件(1995年)・秋葉原通り魔事件(2008年)・東日本大震災(2011年)・京都アニメーション放火事件(2019年)・小田急線無差別刺傷事件(2021年)など、多数の負傷者が発生したときに出動しています。

東京消防庁によると、「スーパーアンビュランス」の価格は、1台およそ7,900万円だそうです。救急車は、1台およそ1,400万円だそうです。

「東京消防庁スーパーアンビュランス 7,900万円」と「宇陀市移動診療車 1億円」を比べると、
「宇陀市移動診療車」は、高額だったように見えます。人の命を救えるなら、価値はあるのでしょう。

宇陀市民
「子どもが熱を出して、移動診療車につれていったことがありますが、「ここでは診られない」と言われてしまいましたよ」

能登半島地震から1ヶ月、宇陀市はどのような支援をしたか

宇陀市役所
宇陀市役所

2024年1月4日、金剛市長は、緊急部次長会議で、義援金箱の設置を決めました。集まった義援金は、全額、日本赤十字社奈良県支部に送金するそうです。
義援金箱は、宇陀市役所と地域事務所(大宇陀・菟田野・室生)に設置され、
2024年1月12日からは、宇陀市立病院・保養センター美榛苑・大宇陀温泉あきののゆ・道の駅「宇陀路大宇陀」・道の駅「宇陀路室生」にも設置されました。

宇陀市は、物的支援について、もちろん必要だと考えていますが、「関西広域連合や奈良県から要請があったら対応する」と、受け身です。
「市長村応援の原則」があるからだそうです。

2024年1月10日~14日、奈良県からの要請により、宇陀市立病院の医師2名・看護師3名をふくむ「奈良県災害派遣医療チーム 第2陣(14名)」が、石川県立中央病院へ派遣されました。

2024年1月12日、奈良県から宇陀市に、物的支援についての問い合わせがありました。宇陀市は、保管している「アルファ化米(3,500食)」を支援できると回答しましたが、けっきょくは使われませんでした。

2024年1月17日~25日、奈良県からの要請により、「建物被害認定調査(第2班)」で、宇陀市職員2名をふくむ、奈良県内の市町村職員10名が、石川県穴水町へ派遣されました。

2024年1月30日~2月8日、奈良県からの要請により、「避難所運営」で、宇陀市職員2名が、石川県穴水町へ派遣されました。

宇陀市は、今後について、奈良県からの要請があれば、市職員の派遣、保健師の派遣、できるかぎりの被災者の受け入れ(住まいの支援)をおこなうそうです。

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「宇陀市移動診療車(UMC)」

「宇陀市移動診療車(UMC)」は、今のところ派遣されていません。
「奈良県からの要請がなければ、ほかの自治体へ派遣できない」ということが、明らかとなりました。
かつて、市長・一部の市議会議員が、「ほかの自治体で災害が起きたとき、支援に使うことができる」と市民に説明していたので、残念です。


災害派遣医療チームは、「DMAT」(ディーマット)と呼ばれるときがあります。
「DMAT」とは、災害現場で、「おおむね48時間以内に活動できる、DMAT研修を受けた医療チーム(医師・看護師・事務職員)」です。
2005年、厚生労働省によって「DMAT」がつくられました。西日本では、兵庫県災害医療センターで、研修がおこなわれています。
したがって、医療チームすべてが『DMAT』ではありません。


ちなみに、2024年1月1日、消防庁からの要請により、「奈良県緊急消防援助隊」が石川県へ出動しています。
2024年1月4日か5日に、石川県輪島市で、「奈良県広域消防組合」の救急車(橿原消防署)が活動しているのが目撃されています。

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市長、またエストニアで新計画、宇陀市民は幸せになるのか?

「クレボン」の〝無人走行配達車〟

2024年1月22日から29日まで、金剛市長・参事ら数名が、エストニアへ海外出張していることが分かりました。
事前準備として、2023年10月に、副市長らもエストニアへ海外出張していました。

市長が、エストニアへ海外出張している理由は、2024年1月25日に、クレボンという会社、アントレプレナーシップ応用科学大学、留学を仲介しているネクストイノベーションと「基本合意書」を締結するためです。

クレボンという会社は、〝無人走行配達車〟を開発している会社(2022年設立)です。

エストニアは、IT(インターネット・情報技術)の先進国として知られており、
インターネットでオンライン会議(テレビ会議)や、オンラインで書類契約ができますが、エストニアへ行く飛行機代・ホテル代(1人約100万円)を節約されませんでした。公報『うだ』に、「調印式(=市長)」の写真を掲載したいからでしょうか?

関連サイト
金沢大学、エストニア アントレプレナーシップ応用科学大学とのオンライン調印イベントを開催

もし、飛行機代・ホテル代を節約して、能登半島地震で被害を受けた自治体に、水1本でも送りたいという気持ちがあれば、エストニア側はオンライン調印に協力してくれたでしょう。
たとえば、石川県輪島市は、
「水、食料はもちろんですが、常備薬・衛生用品・生活用品が不足しております。食料は保存のきくものをお願いいたします」
「不足している用品の例として、水、おむつ(大人用・こども用)、簡易トイレ、ブルーシート、常備薬、衣類(古着はご遠慮ください)、下着、ゴム手袋、アルコールジェル、紙皿、紙コップ、使い捨てスプーン、ゴミ袋、ボディシート、フェイスシート、マウスウォッシュ、歯ブラシ、生理用品、おりものシート」

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クレボン(エストニア)

市長は、「基本合意書」により、2025年9月から、毎年20名の高校卒業以上を、クレボンとアントレプレナーシップ応用科学大学で、自律走行配達車やロボット開発について学ぶ、「宇陀市用のクレボンアカデミー(仮称クレボンアカデミージャパン)」を開校するそうです。留学期間は3年間です。

エストニアの公用語は、エストニア語ですが、ほとんどの人が英語も話せるそうで、英語で授業がおこなわれるそうです。

市長は、「世界に通用する人材を育て、地域に新たな産業を生み出したい。過疎の町の将来を見すえた一歩になる」、「人口流出や雇用先の減少など、過疎地ならではの課題を抱えるなか、新しい事業を成功させて課題解決のモデルになるようチャレンジしたい」と、話しています。

2028年8月に、留学生が卒業・帰国したら、宇陀市に定住して、就職するかは不明です。
宇陀市は、2028年9月に、クレボンの工場・データセンターを、宇陀市内に誘致するそうです。

ふりかえると、2023年7月22日から31日まで(7泊10日)、中学生10名、議員・市職員たちがエストニアへ派遣されました。市長も行っています。予算は4,635万6,000円で、生徒10人が大学に4年間いけるくらいの費用がかかっていました。
派遣前の2023年4月には、市長・教育長たちがエストニアへ海外出張していました。これらの財源は、「ふるさと納税」ですが、数値目標や成果目標はあるのでしょうか。

市民の血税で、市長たちは、エストニアへの海外出張を何回もおこなっています。
「だれが・何人行くのか」を問い合わせても、はっきりとした回答がありません。市民の血税で、市民が知らないうちに、大きな計画が進められています。

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能登半島地震、宇陀市は「移動医療車(UMC)」を派遣せず

宇陀市の「移動診療車(UMC)」

2024年1月1日、石川県では、最大震度7の地震が発生し、今でも不自由な生活を送っている方々がたくさんおられます。
とくに、水・電気・食料・携帯電話の電波がないことが問題となっています。
また、道路の崩壊で「孤立集落」があちこちで発生し、支援を受けられずにいる方々もおられます。

道路の崩落による「孤立集落」の発生は、宇陀市でも起きそうな問題です。

今回の大きな災害によって、あらためて分かったことは、動くのは、警察・消防・自衛隊、医師団(日本赤十字社、空飛ぶ探索医療団アローズなど)・住民だということでした。

宇陀市には、1億円バスと揶揄(やゆ・からかうこと)された、日本一の「移動診療車(UMC)」があります。
市長は、「ほかの自治体で災害が起きたとき、支援に使うことができる」という内容の説明を、何回もしていました。
しかし、今回の災害に、「移動診療車(UMC)」は、派遣されませんでした。

ちなみに、宇陀市のとなり名張市(三重県)では、2024年1月4日、名張市立病院の医師・看護師らが派遣されました。名張市立病院は、宇陀市立病院と同じで、二次救急医療機関です。

関連サイト
能登半島地震 名張市立病院の派遣医療チームが活動報告


そもそも、ほかの自治体で災害が発生したとき、「移動診療車(UMC)」を派遣させることは、簡単なことではありません。
ドライバーをどうするのか、医師をどうするのか、看護師をどうするのか、市職員はだれが・何をするのか、医薬品は何を・いくつ運ぶのか、費用(市民負担?市長負担?)はどうするのか。災害を受けた自治体・県・国などと、どのように連絡をとるのか・・・。
いつでも救援活動ができるように、なっていることでしょう。


今の市長は、「移動診療車(UMC)」(全国初)だけでなく、シェアオフィスの新設、オーガニックビレッジ宣言(全国初)、中学生のエストニア派遣(全国初)など、新しい取り組みが目立っています。
しかし、「その先どうするのか?」が分からないため、先を見とおしていないかのように見えてしまいます。

「はじめることは楽しいが、続けることは簡単ではない」「つねに改善を続けていかなければならない」、民間の経営者にとっては当たり前のことですが、ずっと公務員をされておられた今の市長はどうなのだろうか、不安を感じてしまいます。
市長は政治家であり〝結果がすべて〟です。はじまったことが〝成功〟ではありません。

いずれにしても、「能登半島地震に、日本一の「移動診療車(UMC)」を派遣しなかったこと」も、市長がおこなった実績の一つです。

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