心境荘苑 石本理事長「障害者福祉は社会福祉を包括、社会的認知を向上させていく」

社会福祉法人 心境荘苑 石本喜代次理事長に、日本の障害者福祉について、心境荘苑が目指しているものなどについてインタビューした。

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社会福祉法人 心境荘苑 石本喜代次理事長

記者
社会福祉法人 心境荘苑は、いつできましたか。

理事長
社会福祉法人 心境荘苑は、1966年(昭和41年)に奈良県最初の知的障害者入所更生施設として誕生しました。

記者
社会福祉法人心境荘苑の定員は、何人ですか。

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理事長
定員は、入所利用111人、生活介護(日中一時支援・短期利用など)170人、就労支援センター(就労継続支援B型)26人、グループホーム45人、特別養護老人ホームあじさいの家20人となっています。

記者
心境荘苑では、何人の方が働いておられますか。

理事長
正社員とパートを合わせて、全体で約130人が働いています。

記者
現在の心境荘苑が目指していることは。

理事長
障害者が地域社会のなかで生きることができるように、障害者福祉についての理解を広めていくことです。心境荘苑は、閉鎖的になるのではなく、いろんな方々のご支援・ご理解をいただきながら歩んでいます。
高齢者や身体障害者の福祉については、社会的認知がすすんでいますが、知的障害者や精神障害者の福祉については、社会的認知はまだまだです。
心境荘苑は、すべての人が共生できる地域社会をつくっていきたいと考えており、住民の方々やボランティアの方々などが集まる「知見の場」になっていくことを目指しています。
「障害者福祉」「高齢者福祉」と分けて考えるのではなく、高齢者福祉も「障害者福祉」にふくまれるものだと考えています。障害者福祉を突きつめていくと、高齢者福祉も児童福祉も、「障害者福祉」にふくまれるものだと気づくでしょう。

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社会福祉法人 心境荘苑 石本喜代次理事長

記者
障害者福祉をとりまく環境は、いかがでしょうか。

理事長
2001年、小泉純一郎首相(当時)は〝聖域なき構造改革〟を唱え、社会福祉も例外ではありませんでした。
その後、「障害者自立支援法」ができました。それまでの障害者福祉制度が全面的に見直され、利用者負担が求められるようになりました。民間も福祉に参入できるようになり、社会福祉法人であっても市場競争に対応しなくてはならなくなりました。
「障害者自立支援法」を改正するかたちで、「障害者総合支援法」ができました。「障害者総合支援法」の対象者は、身体障害、知的障害、精神障害、発達障害を持つ人と、300種類以上ある難病患者です。
発達障害と難病患者が含まれるようになったのは前進といってよいでしょう。
以前の「障害者自立支援法」が悪法とも言われ、国は違憲訴訟を起こされ、改正を経て現在の「障害者総合支援法」になっていますが、「障害者総合支援法」も本質は「障害者自立支援法」とそう変わってはいないという見方もあります。
法律や社会環境の変化に合わせて、心境荘苑も変わり続けてきました。

記者
心境荘苑では、職員の募集はしていますか。

理事長
職員の募集はしています。
宇陀市という立地の関係で、職員募集の求人を出しても、桜井市や橿原市などに比べると、応募者が少ないと感じています。
入所者の高齢化・介護の重度化が進んでおり、職員を増やしていかなければ対応できなくなるだろうと考えています。
介護の仕事が未経験、介護資格が無くても大丈夫です。未経験者でも活躍されています。

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社会福祉法人 心境荘苑 石本喜代次理事長

記者
心境荘苑の良いところは、どんなところだと思いますか。

理事長
心境荘苑の創立者・尾崎増太郎の精神を受け継いでいます。
「支援するもの」「支援されるもの」の区別のない位相の精神を受け継ぎ、喜び・楽しみ・悲しみをともにするという大家族的雰囲気を育みながら、お互い力を合わせ「共に生き」「共に有る」を信条にして、みんなで協力し合いながら運営する精神を大切にしています。

記者
心境荘苑は、かつて、現在の上皇天皇夫妻が来られたんですよね。

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理事長
1984年(昭和59年)9月7日、明仁上皇陛下・美智子上皇后陛下が、皇太子殿下・皇太子妃殿下のときにおみえになりました。

記者
色紙に「愚公移山(ぐこういざん)」と書いた意味は。

理事長
大きなことでも、根気よく努力し続ければ必ず成功するということのたとえで、高校生のときから意識している言葉です。

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社会福祉法人 心境荘苑

社会福祉法人 心境荘苑 石本喜代次理事長・・・桜井市役所で永年勤続し、健康福祉部長などを務めた。社会福祉について豊富な実務経験と知識を持つ。定年退職後、61歳のときに心境荘苑にスカウトされた。業務執行理事を務め、2021年9月に理事長に就任した。現在80歳。

社会福祉法人 心境荘苑(しんきょうそうえん)
奈良県宇陀市榛原笠間2540
TEL:0745-82-0218
ホームページ https://www.shinkyousouen.or.jp/