JA宇陀 中谷所長「宇陀の米がおいしいのは水、そして生産者の心意気です」

JAならけん 宇陀営農経済センター 中谷好信所長

JAならけん(奈良県農業協同組合)宇陀営農経済センター 中谷好信所長に、宇陀の米について・農業についてインタビューした。

記者
今年の米のできは、いかがでしたか。

所長
今年は、長雨の影響で、生産量が減少しました。
米づくりには、水が欠かせませんが、水を減らさなければならない時期(中干し)に、雨が続きました。
6月から8月にかけては、気温が上がり・湿度が下がることが理想ですが、今年はそういう天候が少なかったです。

宇陀の水田

記者
「宇陀産の米はおいしい」という定評があります。宇陀産の米がおいしいと言われる理由は。

所長
一つには、水が良いと言う点が挙げられるでしょう。
たとえば、新潟県魚沼産コシヒカリは全国的に有名ですが、魚沼は山に囲まれ、米づくりに雪どけの山水が使われています。
宇陀は、魚沼と、地理的に似ているかもしれません。宇陀は、奈良県において「東部 中山間地域」にあたり、山に囲まれています。米づくりに「山水」が使われています。
宇陀は、奈良盆地などの平野部、いわゆる「平坦(へいたん)」よりも農地面積は広くないため、生産量は減りますが、品質の良い米ができると言われています。

JAならけん 宇陀営農経済センター 中谷好信所長

記者
宇陀では、どの品種がつくられていますか。

所長
宇陀では、「ひとめぼれ」が6~7割つくられています。
「平坦(へいたん)」では、「ひのひかり」が多いです。

記者
高く売れる品種は。

所長
「こしひかり」でしょう。2番目に「ひのひかり」、3番目に「ひとめぼれ」「秋田こまち」「きぬひかり」だろうと思います。

記者
宇陀では、「こしひかり」ではなく「ひとめぼれ」が多く作られているのは、どうしてですか。

所長
宇陀の天候が合っているからでしょう。
「こしひかり」は、稲がたおれやすいという特徴があったり、作りにくい品種です。地理・天候によって、その地域に適した品種があります。

記者
スーパーへ行くと、魚沼産・北海道産など、さまざまな産地の米が売られています。
宇陀産の米が売られていませんが、どうしてですか。

所長
宇陀産の米は、奈良県内で生産された米として、「奈良県産の米」として、本店(JAならけん)が業者に販売しています。
道の駅などにある「農産物直売所」や、「まほろばキッチン橿原店(JAならけん農産物直売所)」では、生産者が個別に出荷しているので、「宇陀産の米」を見つけることができるでしょう。

道の駅(宇陀路大宇陀の農産物直売所)で見つけることができた
宇陀産の米(JAならけん 宇陀営農経済センター)

記者
コロナの影響はありましたか。

所長
ありました。
コロナの影響で、多くの飲食店が休業されたり、時短営業されました。飲食店への米の流通が減り、「米あまり」という状況になっています。

記者
将来的な課題はありますか。

所長
生産者の高齢化、後継ぎ不足、不作地の拡大などの問題があります。
集落営農を広げていくことや、生産費用の削減や、効率化などの取り組みが求められるようになっています。

記者
どのようなお気持ちで、取り組んでおられますか。

所長
生産者一人ひとり、農地一つひとつ、違いがあり、同じではありません。
宇陀は、山に囲まれており、広い田んぼは少ないです。
生産者にとっては、作りにくい、効率が悪い、もうからない場所ではありますが、先祖代々からの田んぼを守る意識、地域の自然環境・里山を保全する使命感があって、もうけだけにこだわらず、質の良い米を作っておられることに、生産者の方々の心意気を感じます。
私の力で、米価をすぐにどうにかすることは難しいですが、これからも、生産者の方々とともに、あゆんでいきたいと思っています。

JAならけん 宇陀営農経済センター 中谷好信所長

記者
色紙に「絆」と書かれた想いは。

所長
人間のつながりが一番大切なものだと考えています。私自身がいるのも、先祖がいたからです。なにもかもが、つながっていると考えています。
色紙をななめにしたのは、そのほうが独創的かなと思いました。

記者
趣味はありますか。

所長
プロ野球観戦です。父の影響で、子どものときから阪神ファンです。
あと、ゴルフを少し(笑)

JAならけん 宇陀営農経済センター

宇陀市の水稲について(2020年)
経営体数 661経営体
収穫量  3,130トン
作付面積 660ヘクタール