連合奈良 西田会長「社会を良くしていかなければならない、強い想いがあります」

連合奈良 西田一美会長
連合奈良 西田一美会長

連合奈良 西田一美会長に、連合について、政治・社会などについてインタビューした。

記者
まず、連合とは、どのような組織ですか。

会長
連合(日本労働組合総連合会)とは、1989年に結成され、48の産業別労働組合(産別)が加盟し、組合員は約700万人となっております。
すべての働く人たちのために、雇用と暮らしを守る活動をおこなっております。
平和・人権・福祉・環境・教育・安全に関する分野にも取り組んでおります。雇用と暮らしに関係しているからです。
「働くことを軸(じく)とする安心社会」の実現を目指しております。

連合の仕事
連合の仕事

記者
連合奈良は、どのような活動をされていますか。

会長
連合奈良(日本労働組合総連合会 奈良県連合会)は、27の産業別労働組合(産別)が加盟し、組合員は約32,000人となっております。
働く人からの労働相談を受けたり、国・県・政党などに要望などをおこなっております。
コロナが2年も続き、心も体も疲弊してきている労働者が増えてきています。労働者の状況を把握し、産別の意見をとりまとめ、行政に改善を要請し、政策につなげていく取り組みをしております。
とくに、奈良県は、「女性の就業率が低い」という特徴があります。
女性就業率は、ながらく、全国ワースト1(都道府県47位)です。
女性就業率を高めていくための取り組みをしております。

連合奈良に加盟する産業別労働組合(産別)
連合奈良に加盟している産業別労働組合(産別)

記者
女性就業率が都道府県47位・最下位なのは、なぜだと思いますか。

会長
いろいろな理由があるでしょうが、一つには、性別役割分担意識、「男性が働き、女性が家事をする」という意識が根底にあると思います。
奈良県は、大阪府のとなりにあり、大阪市には大企業がたくさんあります。大阪へ通勤し働いている県民は多いでしょう。男性が大阪へ働きに出て、女性は家で家事・子育てをするという実態があるでしょう。
女性が働きたくても、子どもをあずかってくれる保育所などの子育て環境が整っていないということもあるでしょう。

連合奈良(日本労働組合総連合会 奈良県連合会)
連合奈良(日本労働組合総連合会 奈良県連合会)

記者
奈良県の最低賃金は、2021年10月から、866円になりました。28円上がったのは、働く人にとっては喜ばしいことです。でも、低いと思いませんか。

会長
低いと思います。
たとえば、時給1,000円だったとしても、1日8時間・週5日働いて、1年で192万円、年収200万円以下です。
人がゆたかな人生を過ごすためには、足りません。
一気には上げられないので、少しずつ時給1,000円の達成に向けて、取り組んでおります。
大阪府の最低賃金は、992円です。奈良県よりも126円高いです。奈良県と大阪府の賃金格差は、奈良県から大阪への人口移動、奈良県外への労働力流出につながっています。
奈良県に労働力をとどめるためにも、賃金格差を縮めて(ちぢめて)いかなければならないと考えております。

記者
年収200万円以下では、さまざまなことを、あきらめなければならない・がまんしなければならない人生になるでしょう。
日本の労働者は、非正規労働者(パート・派遣など)が増加しており、労働者全体の4割になろうとしています。

会長
日本は、正社員だけでなく、非正規労働者・臨時・派遣・パート・アルバイトなど、労働者の立場が多種多様化し、全体として賃金が抑制される仕組みになってしまいました。
「いろいろな働き方ができて良い」と言う人もいるでしょうが、みんなが納得しているかと言えば、そうではないと思います。
派遣については、労働者派遣法が改悪され続けています。製造業にまで派遣が認められるようになりました。その結果、賃金が低いままになっています。労働者派遣法は、もとの「13業種・26職種の専門職限定」に戻すべきでしょう。

連合奈良 西田一美会長
連合奈良 西田一美会長

記者
連合は、どの政党を支持していますか。

会長
立憲民主党と国民民主党です。奈良県には国民民主党は、まだありません。社民党とは、友好関係にあります。

記者
自民党との交流はありますか。

会長
ないですね。

記者
日本共産党との交流はありますか。

会長
ありません。

記者
政党支持率を見ますと、最近のデータ(NHK調べ・2021年10月18日)では、自民党38.8%、立憲民主党6.6%、公明党3.9%、日本共産党2.8%、日本維新の会2.3%、国民民主党1.0%、れいわ新選組0.6%、社民党0.6%、NHK党0.1%、特になし36.2%、となっています。
立憲民主党と国民民主党の支持率が、低いと思いますが、いかがですか。

会長
残念な数字です。
政党政治に対する関心の低下、政治ばなれもあると思います。

記者
連合の全国700万人の組合員を考慮すると、立憲民主党と国民民主党の支持率はもっと高くなるはずだと思うのですが。

会長
連合は、労働組合ですから働く者の政策実現を基軸に推薦候補や支持政党を決定しています。そのことを組合員にお知らせはしています。支持政党や投票先を、強制することはできません。
支持政党も、投票先も、組合員一人ひとりの考えが尊重されます。そのため、連合の考え方をどれだけ理解してもらうかが、投票行動につながると思っています。
48ある産別(産業別労働組合)も、考え方はさまざまです。
さらに、組合員は、政党だけで決めているのではなく、候補者の人がら・個性を見て判断して、投票していると思います。
政党支持率の数字は、そのまま選挙結果に反映するものでもないと思います。

記者
西田会長は、2年前(2019年)に、参議院議員選挙に立候補されました。はじめての選挙ながら、得票率が4割もあって、善戦されました。
選挙前と選挙後、心境の変化はありましたか。

会長
選挙前から、「今のままではいけない、社会を変えなければならない」という想いがありましたが、選挙中に、県民のみなさんにお会いして、さまざまな声(意見)や現状をお聞きして、その想いは、実感に変わりました。
「社会を変えていかなければならない」という気持ちは、今でも同じです。
生活でしんどい思いをしている方々はたくさんいらっしゃいますし、そこを「政治が救えていない」と思います。
たくさんの方々に投票していただきましたが、ご期待にそえなかった(当選できなかった)ことに、申し訳ない気持ちがあります。

連合奈良 西田一美会長
連合奈良 西田一美会長

記者
現在、衆議院議員選挙(2021年10月19日公示、31日投開票)がおこなわれています。
各政党、マニフェスト(選挙公約)・政策を発表しており、自民党も立憲民主党も、同じようなことを言っているように見えるのですが、いかがですか。

会長
各政党のマニフェスト(選挙公約)・政策を見ますと、自民党のマニフェスト(選挙公約)・政策には問題点があります。命を守るという強い政策が、立憲民主党、国民民主党のマニフェスト(選挙公約)・政策のほうが支持できます。

記者
今回の衆議院議員選挙は、奈良1区と奈良2区は、自民党と立憲民主党が選挙戦をしています。
しかし、奈良3区では、日本共産党、NHK党、無所属2名、となっています。連合の支持する政党がありませんが、どう思われますか。

会長
残念です。3区の県民に選択肢を示せず失望させたことは今後もボディブローのように効いてくるのではないかと思います。
自民党も立憲民主党も候補者を出さなかった選挙区というのは、ここ(奈良3区)だけじゃないかな、と思っております。

記者
奈良3区については、連合奈良は、日本共産党を支援するのですか。

会長
それはないですね。

記者
色紙に「命」と書かれた想いは。

会長
生活に困窮されている方、非正規で年収200万円以下という方がどんどん増えているなかで、何が一番大事かを考えたときに、「命」だと思いました。暮らしや人権もふくめてです。
コロナの影響を受けて、自死をされる方、経営に苦しんでおられる方、仕事で悩んで思い詰めておられる方がおられます。
賃金を上げなければならないのは、命・生活を守るためです。
そのような想いは、コロナの前からありました。