[市議会]宇陀市民がかぶる720万円の損失、だまる議員が続出か

総務産業常任委員会資料「議案第56号 権利の放棄及び和解について」

宇陀新聞社は、「保養センター美榛苑」の(前)指定管理者「休暇村サービス」が、裁判所において主張していた「市政の混乱による風評被害」について関係資料を入手することができたため、審査請求を取り下げた。

2019年(令和元年)5月28日、休暇村サービスは、「市政の混乱による風評被害」を受けたという理由で、指定管理料(年額2,160万円)を減額することを求め、宇陀簡易裁判所に「債務不存在確認の調停」を申し立てた。

宇陀市は、休暇村サービスと調停を続けていたが、2021年(令和3年)10月5日、宇陀簡易裁判所は、風評被害分として720万円を認め合う和解案を提案し、両者が受け入れた。
2021年12月、宇陀市議会(令和3年第4回定例会)は、賛成多数(賛成13・反対1)で認めた。

指定管理料(税収入)720万円の権利放棄(損失)は、誰も責任をとらないまま、宇陀市民がかぶることになった。

今回、入手した関係資料とは、休暇村サービスが裁判所に提出した文書をもとに、宇陀市が作成した文書で、宇陀市議会 総務産業常任委員会で配布されたものである。特別な文書ではない。

関係資料を見ると、当時(2018年、(前)市長が就任・美榛苑を残すか残さないか・新ホテル計画の賛否を問う住民投票があった年)、美榛苑の宿泊人員・休憩人員・営業収益は、前年度より2割ほど減少していた。

休暇村サービスは、美榛苑移転推進派議員団(11名)が、ひのき坂西側に新ホテルを建設する計画を推進するため、美榛苑の老朽化・立地の問題を取り上げていたとして、当時の新聞記事などを裁判所に提出していた。

宇陀市は、指定管理料3分の1に相当する720万円を権利放棄する和解案を受け入れた。
720万円とは、2018年(平成30年)7月~翌年3月までの9ヶ月間に市政の混乱があり、美榛苑が風評被害を受けたとして、指定管理料の月額換算180万円を月額換算100万円に減らすという内容だった。
おおよそ半額に近い、80万円の権利放棄が9ヶ月間で、720万円となる。

宇陀市民にとっては、損失が大きすぎた。

市議会内では、賛否両論あっただろうが、もし反対多数で否決されれば、和解案は白紙となり、調停は最初からやりなおしとなる。そうなれば、美榛苑に関する問題が再燃する。
市議会は、やむを得ず(?)和解案に賛成多数となったのだろうが、この件について、宇陀市民にきちんと説明している議員は少数である。

ちなみに、2020年(令和2年)3月24日、(前)市長は、解決のために「(休暇村サービスに全額納付させるため)訴えを提起することについて」を上程したが、(前)市議会は反対多数で否決している。

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[情報公開]情報かくしか、宇陀市長に「審査請求書」を提出

不開示決定通知書

2022年3月17日、宇陀新聞社は、「開示請求(情報公開請求)」に対して「不開示決定」をした宇陀市の対応には問題があるとして、宇陀市長あてに「審査請求書」を提出した。

宇陀新聞社が開示を求めているのは、美榛苑の指定管理者だった「株式会社休暇村サービス」が主張していた「市政の混乱による風評被害」についての文書。
休暇村サービスは、宇陀簡易裁判所に「債務不存在の確認」を申し立て、市政の混乱による風評被害(売上減少)があったことの正当性を公的に主張していた。

宇陀新聞社の「開示請求」に対して、宇陀市は「不開示決定」をおこなったが、不開示決定とした理由は、
1.情報公開を前提に作成された文書ではないため
2.休暇村サービスの権利・競争上の地位・正当な利益を害する恐れがある
とのことだった。
しかし、1も2も、宇陀市にとって都合よく解釈されすぎている。

1については、情報公開を前提に作成された文書しか公開しないのであれば、『広報うだ』レベルの情報しか市民に公開しないことになってしまう。行政文書は、市民の財産である。
2については、休暇村サービスは民間企業として、権利・競争上の地位・正当な利益を守るために主張していたことであり、休暇村サービスが簡易裁判所に訴え、真に正当性があるとして、正々堂々と公的に主張していたことである。調停次第では、美榛苑サービスの主張が全面的に認められていた可能性もあった。

宇陀市が、休暇村サービスの主張を隠蔽(いんぺい)するような「不開示決定」は、宇陀市が自己保身に走っているかのように見えてしまう。これでは、宇陀市民の権利・競争上の地位・正当な利益を害する恐れがある。

ちなみに宇陀新聞社は、2022年3月11日、担当課である観光課に電話をしている。観光課長からの電話を依頼していたが、電話は現在も来ておらず、2022年3月17日「審査請求書」の提出にふみきった。

「審査請求書」の趣旨および理由
趣旨は、全文開示を求める。理由は、以下のとおり。

今回、審査人が開示請求している文書は、公開できる文書であり、隠蔽(いんぺい)すべきものではない。
文書は、特許のような企業秘密的なものではないし、文書の内容は、休暇村サービス側が、裁判所に債務不存在の訴えを申し立て、休暇村サービス側が権利・競争上の地位・正当な利益を主張していたものであり、誰に見られても恥じない主張がされていた文書である。
そもそも、行政文書は、市民の共有財産である。「情報公開を前提に作成された文書ではないため」という理由は、理由とはならず、宇陀市民としては納得できない。安易に不開示決定で済ませる行政の隠蔽(いんぺい)体質があるかのように見えてしまう。
権利放棄は、宇陀市にとっては、受け入れがたいことだったであろうが、宇陀市は、全額納付を求めていたことは承知しており、評価している。
休暇村サービス側が主張していた「損害分」は、休暇村サービス側が、代理人弁護士を立てて、裁判所という正式な場で、宇陀市(宇陀市民)に対して主張していたものであった。それにもとづき裁判所が公平な立場で判断し、和解案を提案した。権利放棄ついては、市議会が賛成多数で認めている。文書は、前市長時代の市政混乱について知ることのできる、そして結果として、権利放棄という市民の利益に関係する重要な文書である。
したがって、審査人が開示請求している文書を不開示決定したことは不当であり、全文開示を求める。

次は、宇陀市から「弁明書」が来るだろう。宇陀新聞社が「反論書」を提出すれば、情報公開審査会で審査されることとなるが、保身になりがちな行政の対応は変わらないだろう。

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令和3年第4回宇陀市議会定例会・議案第56号「権利の放棄及び和解について」(2021年12月)

美榛苑の指定管理者をしていた「株式会社休暇村サービス」は、2019年(平成31年)3月31日をもって指定管理者を終了、撤退した。

株式会社休暇村サービスは、宇陀市へ納付しなければならない施設使用料(指定管理料)年間2,160万円(税込み)を納付しないで、撤退していた。

2019年(平成31年)4月、宇陀市は株式会社休暇村サービスに、催促状を出した。

2019年(令和元年)5月10日、休暇村サービスは、838万1,600円を納付した。休暇村サービスは、838万1,600円だけを納付した理由・内訳を宇陀市に説明し、「損害分を相殺した」「風評被害を受けた」と主張した。

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2019年(令和元年)5月28日、株式会社休暇村サービスは、宇陀簡易裁判所に「債務不存在確認の調停」を申し立てた。

2021年(令和3年)10月5日、宇陀簡易裁判所は、宇陀市の政治的・行政的理由による混乱に起因する風評被害分720万円を差し引いた残額(601万8,400円)を休暇村サービスは宇陀市に支払う調停案を提示した。
宇陀市と休暇村サービスは、調停案を受け入れた。

結果として、宇陀市は、720万円とこれまでの遅延損害金149万8,945円(年利5%)、あわせて869万8,945円の権利(税収入)を放棄した。

2021年12月、宇陀市議会(令和3年第4回定例会)は、権利放棄による和解について、ほぼ全員(賛成13名・反対1名)が認めた。
高見市長の失職(2020年5月15日失職)後も、宇陀市は、全額の徴収を目指していた。市議会は、きびしく追及してきた。
しかし、金剛市長になってから、市議会は市長・行政に甘くなったのか。

ちなみに別件であるが、宇陀市は、休暇村協会に「新ホテル計画の中止」による損害賠償として和解金を支払ったこともある。
金額は、582万8,027円(基本設計委託料388万8,000円、交通費73万9,166円、人件費120万0,861円)だった。

大損失は、誰も責任をとらないまま、宇陀市民がかぶることになった。

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